Ⅱ 心臓や呼吸が止まってしまったら……(2)
救命処置の具体的手順は次のセクションで詳しく説明しますが、ここでは救命処置のうち、「心配蘇生法(しんぱいそせいほう)」と「AEDの使用」について簡単に説明します。
① 心肺蘇生法とは、胸を強く圧迫したり、息を吹き込むことによって、止まってしまった心臓や呼吸の動きを助ける方法です。
命が助かる可能性は時間とともに減っていきますが、そばに居合わせた人が心肺蘇生を行った場合には、その減り方がずいぶんとゆっくりになります。
心肺蘇生を行った場合には、行わなかった場合にくらべて、命が助かる可能性が大きく違ってきます。
平成17年度の総務省消防庁の調査によると、心臓や呼吸が止まってしまい救急車で病院に運ばれた人の生存率は、救急隊による心肺蘇生が3分以内に開始された場合に比べて、10分以上経過してからでは4割まで低下していましたが、市民による応急手当を受けた人の生存率は、応急手当を受けなかった人の場合に比べて1.4倍もありました。
② 突然に心臓が止まるのは、心臓がブルブルと細かくふるえる「心室細動」によって生じることが多く、この場合には、できるだけ早く心臓に電気ショックを与え、心臓の動きを取り戻す(これを除細動といいます)ことがとても重要です。
AED(=自動体外式除細動器)は、この電気ショックを行うための機器です。
コンピューターによって自動的に心室細動かどうかを調べて、電気ショックが必要かどうかを決定し、音声メッセージで電気ショックを指示してくれますので、一般の人でも簡単で確実に操作することができます。
心室細動になってから電気ショックを行うまでの時間が1分遅れるごとに、生存退院のチャンスが7~10%ずつ低下することが知られています。
このため、最近では空港や駅、催し物ホール、デパートなど、いろいろな場所にAEDを備え付け、その場に居合わせた人によってAEDを活用してもらうことで、今まで医師や救急車を待っていたのでは助からなかったかもしれない人々の救命につなげることを目指す動きが広がっています。
皆さんも駅などを通りかかったら設置されているAEDを探してみてください。
そして、万が一、その付近で誰かが突然に倒れた場合には、このAEDを使用して救命に役立ててください。